なんだか以前書いたPD22の記事はよく検索されてくる。しかし経験談とノウハウがごっちゃになって読みづらいので、考察だけ絞って少し書き直し。

細かいところを端折ってるので結構ざっくりだけれども、雰囲気がつかめれば。

あくまで自分の経験上の話で、間違っている可能性もあります。なので、あくまで参考に留めておいて下さい。
キャブセッティングをしてエンジン壊れても、一切関知できませんし、責任も取れませんです。
以上をご承知の上で以下、どうぞ。


まず各部の名称と品番(ホンダCRF100)。
コピー 〜 CA280295
F-1:スロットルケーブルセット 17920-KN4-307
セットになっていてスロットルケーブルも付いて来る
2:フロートバルブセット 16011-KN4-A61
3:ジェットニードルセット 16012-KN4-A61
4:フロートセット 16013-KN4-A10
5:フロートチャンバーセット 16015-KN4-A10
6:スクリューセットA 16016-KN4-L10
7:スロットルバルブセット 16022-KN4-A61
9: スクリューセットB 16028-KEH-900
16: ジェットニードルホルダー 16165-KN4-A61
20: 4X16 スクリューワッシャー 93892-04016-18
23: メインジェット#98 99101-393-0980
23: メインジェット#92 99101-393-0920
24: スロージェット#35 99104-KN4-0350

構造:
PD22はVM型(ピストンバルブ型)キャブレターで以下のような構造になっている。

cab01

設定可能な点は主に以下の5点
1.JN:ジェットニードルの位置
2.MJ:メインジェット
3.SJ:スロージェット
4.AS:エアスクリュー
5.IS:アイドルスクリュー

上記のうち、5のアイドルスクリューは単純にアクセルを強制的に開ける様なもので、セッティングには関係ない。
どれかを調整すると全て相互に影響される点に注意。

このほかに油面を調整することで、多少濃い、薄いを調整できるが、相当大きく外している場合を除いて、あまり油面を調整する事は無い。
基準値にあわせておけば良い。

以下に各部調整項目の説明を記す。

ジェットニードル(JN):
JNホルダーから供給されるガソリン量を調整する針の様なもの。アクセルワイヤに直結している。
スロットルバルブと呼ばれる、キャブレターを通過するエア流量を調整する蓋にくっついている。
JNホルダーとは、メインジェット経由でガソリンを供給する筒で、アクセル閉の時にはJNによって、蓋がされている形になる。
ハンドルについているアクセルを捻ると、スロットルバルブとジェットニードルがキャブ上方に引っ張られ、エア流量及びメインジェットから流れるガソリン供給量が増える。
これによってエンジンの回転数が上がる仕組みになっている。
アクセルが完全に閉じている時、JNホルダーからのガソリン供給はほぼ無くなる。

ニードルに付いているクリップによってスロットルバルブにくっついている位置を変更することが出来る。
結果、この位置を変更すると、スロットルバルブの開度と、JNの開度の関係が変更になる。
これによって流れる空気流量と、MJから供給されるガソリン流量の比率を変更できる。
クリップによって位置を変更し、JNの位置を下げると、空気流量に比較して、MJから供給されるガソリン流量が減るので、薄くなる。逆にJNの位置を上げると濃くなる。
アイドル付近から主にアクセル中開度までの間が影響され、1段変更するだけで結構大きな影響が出るので注意。初期値に合わせておいて、MJやSJの設定がほぼ決まってから、調整する。

JN自体も針の形として様々な種類があるが、
基本的には純正を交換することも無いと思う。
PDはそこまでシビアなキャブじゃないし、逆にそこまで詰めるのを公道で行うのは難しい気がする。

スロージェット(SJ):
SJとASはアクセルの開度にそれ程関係なく、比較的一定量のガソリンを噴き続ける部分を調整する。
SJの番手を大きくすると、アクセル開度全域に渡ってガソリン供給量が増加される。
全域が影響されるので、必然的にMJも影響を受け調整が必要となってくる。
アクセル半開〜全開領域では、MJ経由でJNホルダーから供給されるガソリン量が大きいので、比較的SJの影響は少ない。

SJは燃料供給のベースなので、ここをまず詰める。
エイプ100、XR100なら、SJ:38で少しだけ濃い目に感じる。SJ:35ではやや薄い感じ。
固体差はあると思うが、SJ:38をベースにしてスタートし、濃い状態が続くようだったらSJ:35にして、ASで調整するのが良い。

エアスクリュー(AS):
PD22では、ASでスロー側の追加補正ができる。SJで決まらない微調整を行うイメージで考えると良い。
SJと同じで、ASは全域に影響を与える。
基本はSJを微調整する為に使うと考えておけば設定しやすい。

なお、PD22のASは、ネジ部分にゴムホース等を差し込めば、信号待ちの時など、何時でも調整できる様に出来るので、やっておくと便利。

CA280327

メインジ
ェット(MJ):
キャブセッティングの華、MJ。
アクセル半開〜全開域で影響し、この領域でのガソリン流量の決定権を持つ。
アイドリング付近のガソリン流量には殆ど影響しない。

油面
フロートチャンバー(キャブのガソリン受け)に入っているガソリンは、フロート(浮き輪見たいな奴)の浮き沈みによって一定の量に保たれている。
フロートを手で上下させると、フロートバルブが上下するのが分かる。タンクからキャブレターへガソリンを供給するパイプがここで開閉することになる。
詳しい説明は省くが、油面が高くなると、ガソリンが出やすくなって若干濃くなる。逆に低くすると薄くなる。しかし一般的にはMJの5番程度も変わらないと言われていて、あまり気にする必要はない。
実際PD22にて少し油面を触ってみたが、体感できるかどうか、のレベルだった。
エイプの場合、フロートチャンバーのあわせ面から3〜5mm程度下がったところ辺りで調整しておけば問題ない。
※2気筒、4気筒エンジン等では、油面を揃えるのはとても大切な事らしいのですが、もう長らくシングルエンジンしか乗ってないので、この点について語れる事はないです。



セッティング:
キャブのセッティングは、流れる空気に対して、どうやって適切なガソリンを供給するか、である。

余談だが、キャブレターがどんなに良くなっても、セッティングがどんなに決まっていても、人間がある程度適切に操作してあげないと上手くエンジンは回らない事に注意。アクセルガバ開けして、エンジンがボコつくのは当たり前である。VM形式のキャブは構造上仕方ない。

空気がキャブに流れるのはエンジンからの吸い込みがある為で、
回転数が高ければ、それだけ流れる空気の量は多くなり、必要なガソリン量も増える。流れる空気の量が多くなると、負圧も高まってガソリンも沢山流れる。
これがキャブレターの基本の動作。

キャブの設定は以下の4点で見る。
(まぁこの点は人それぞれだけど、基本という事で)

1.回転低/アクセル閉 →例:アイドリング、低回転巡航中
2.回転低/アクセル開 →
例: 加速中等
3.回転高/アクセル開 →
例: 上り坂等の高負荷時等
4.回転高/アクセル閉 →
例: 減速時、エンブレ時等

上記4点を押さえる為に、セッティング中はキャブ内部に流れる流速がどうなっているか、どこのジェットからどの程度のガソリンが流れているかを考えながら走るとセッティングは煮詰まりやすい。

例として、幾つかの状況を考えてみる。

【アイドリング付近】
・エンジンの回転数が低い→空気流量は少ない
・アクセル閉→負圧が高まる
エンジンは動いているので、強制的にエアが流れるが、アクセル閉なので流速はあがる。この為、比較的高い負圧がジェット類に掛かる。

このときは、
MJ
側はニードルによって抑制されている。
SJ側は高い負圧でガソリンが供給される。

cab02


エンジン回転数が上がらない内にアクセルを
開としても、回転数が低いのでキャブレターに流れる空気の流速が上がらない。
MJ側は開放されるが、ガソリン供給量は上がらない。
SJ側も同様の理屈でガソリン供給量が下がる。
ビッグキャブの場合、アクセルをいきなり開けるとエンジンストールの様な状況となるのは、ガソリン供給量が低下し、混合気が急激に薄くなる為。
回転数にあわせた適切なガソリン流量を決定するには、ドライバーの適切なアクセル操作が必要な理由。

cab03


【高回転時のアクセル全開】
・エンジンの回転数が高い→空気流量は多い
・アクセル開→負圧が低まる
回転数が高まってくると空気流量が増えるので、トータルとしてジェット類に対する負圧がある程度発生する。
負圧が高まる為にMJ側、SJ側共にガソリンの流量が増える。
特にMJ側はJNによる抑制が無くなり本領発揮。ガソリン流量をほぼ決定付ける仕事をする。

cab04



このように各パターンでの動きを把握した上で、各状況下でのMJとSJの働きについて記載する。

SJ側と、各状況の関連性:
SJとASを調整する際に意識する事は以下。
1.回転低/アクセル閉 → SJからの流量中
2.回転低/アクセル開 →
SJからの流量低
3.回転高/アクセル開 →
SJからの流量中
4.回転高/アクセル閉 →
SJからの流量大

エンジンブレーキ時にアフターファイヤが発生する現象というのは、上記4番の回転高/アクセル閉の状態という事であり、SJが原因である割合が高い。アクセル閉なのでMJ側は大して仕事をしていないので、まずはSJ側を疑うべきである。また、前述の理由により濃い状態である事が多い。実際ASを下げる方向で調整すると結構な確率でアフターファイヤが発生したりなくなったりする。

MJ側と、各状況の関連性:
MJとJNを調整する際に意識する事は以下。
1.回転低/アクセル閉 → 流量低
2.回転低/アクセル開 → 流量中
3.回転高/アクセル開 → 流量大
4.回転高/アクセル閉 → 流量低


回転数とアクセル開度とガソリン流量の関係性:
前述の関連性を図にすると以下の様な感じ。
cab05

現在のバイクの状況から、1〜4のパターンを想像して、SJはどの程度仕事をしているのか、MJはどうか、を探っていく。


濃い薄いの状況:
実際に濃い、薄いを体感するのは、実車でジェット類を大きくしたり小さくしたりして覚えた方が早いし正確だと思う。
代表的な症状を上げるとすれば以下の通り。

・濃い状況
回らない、力が無い
アフターファイヤが発生する
低域ではエンストする
プラグが黒くてべったりしてる

・薄い状況
回らない、力が無い、負荷がかかっていない状況でも回らない
失火する
水温、油温等が非常に高くなる
プラグが白くて焼けた感じ

実際のところ濃くても薄くても同じような症状が出て、判別が難しい事が多いので、キャブ設定をしながら体感していくのが良いと思う。

ちょっと分かり辛いジェットニードル(JN)の補足:
MJ、SJは、単純に言えば最大のガソリン流量を抑えるために存在するが、JNはアクセル開度によってガソリンの流量を変化させるためにあると書いた。
ジェットニードルの位置を変更すると、アクセル開度が同じ状態で、ジェットホルダーからの燃料供給量を増減させることが可能であるが、もう少し詳しく記載する。

下の図はニードル位置の変更による影響を表している。
アイドル付近からアクセル中開度まででは、単純にニードルによる制限が緩和されてガソリン流量が増える。つまり混合気が濃くなる。

jet01

アクセルを開けると、ジェットニードルの位置が上がっていき、ジェットフォルダーから供給されるガソリン量が増える。
jet02

アクセルを更に開けると、MJの制限が強まるので、比較的JNの影響は小さくなっていく。アクセル中開度〜全開域では、主にMJによるガソリン流量の抑制が行われる。

jet03


MJとJNの変更を、単純に図に描くと以下のような感じ。

jet04




エイプ100/XR100の場合:
まずアイドリング付近にてSJ/ASを調整する。ここがガソリン流量のベースを作る。
エイプ/XR100ならば、マフラー変えようが、115ccにしようが、SJ:38からスタートで良い。
ASを触りながら低〜中域回転数のアクセルのツキなどを感じて、どうしても濃い場合はSJを35へ。
再度ASを触りながら低〜中域を整える。
アクセルを開けたときにしっかりとトルク感がある、閉じたときにアフターファイヤーが酷くない(設定途中は多少あってもしょうがない)、という状況になったらMJへ。

MJは、エイプ/XR100ならば、少々カスタムしていても90〜110の範囲でセッティングが出ると思う。
現バイクはCRFエアダクト、PD22、デイトナマフラー、115ccで、MJ:95、SJ38で通年OK。
回転数中〜高で、アクセルを大きく開けてみる。長い上り坂があれば、回転数を維持したままアクセルを開け続ける事が容易になるので、もし近所にあれば、迷惑にならない様に注意してMJの設定に使うと良い。
(というかセッティングで全開にする時は、周囲の迷惑にならないように!)

MJが決まり、アクセル開度が高い時に、高回転、低回転でスムーズに加速する様になれば設定は終わり。
ただし、MJをいじると大抵、SJ/ASを調整する必要が出てくるので、再度そちらの調整を。

どうしても中域あたりでの調子が決まらない場合、最後の手段としてJNを調整する。
JNがアクセル開度と共にMJからの流量を調整している事を想像しながら行うと良い。
JNを調整すると、ほぼ全域に影響がでてしまうので、再度SJ/AS/MJを見直す必要が出てくる。


その他セッティング中の注意:
ギアをニュートラルにしてアクセルを開けると、ピックアップも良く回転数も上がるが、人が乗ると力ない、上り坂が苦しい、という場合はMJが薄い可能性がある。
あんまりその状況が続くのはよろしく無いので、早めの調整が必要。濃い場合はやや粘るような感触になる事が多い。
薄くしたからと言って、待ち乗り10分そこらですぐにエンジンが壊れる様な事は無い(壊れない保証はしませんので自己責任で)。
一度極端に濃い設定、薄い設定で、色々と試し、薄い場合の症状、濃い場合の症状を体感しておくとよい。
アフターファイヤは濃くても薄くても出る。決め打ちしないこと。


プラグの色の注意:
プラグの色は、セッティング中に見ても意味が無いし、セッティングの良し悪しは分からない。
燃料の濃い、薄いによって色の変化はあるが、それだけではない。
アイドリングが長ければ黒くなるし、全開時間が長ければ白くなる。
プラグの番手によっても白い、黒いの変化がでる。
あくまでエンジンがきちんと下から上まで回っている状態でプラグは判断すべきである。

プラグの番手はプラグ熱価で。適温に保たれているとカーボンが綺麗に焼ける。これはプラグの自己洗浄作用と言われている。
例えば、SJの調整をやっていると、適切なプラグが付いていたとしても温度も上がらない。
するとカーボンが焼けずに黒くなってくる。
じゃぁ濃いのかといってキャブの設定を薄くするのは間違っている可能性がある。