ようやく試験も終わり、出来の悪さに一日へこんだ後、どうにか立ち直ったところで、倍電圧回路の実験の結論を得たのでご報告。

1.倍電圧回路はあんまり(それだけだと)意味が無い。
2.色々壊れる課題をはらんでいるので、課題解決が出来ないならやらない方が良い。 

倍電圧にするならば、IGコイル、プラグも含めて2次側の電圧コントロール、倍電圧と関連するデバイスの耐障害性を意識しないと厳しいです。

これが結論です。
以下は簡単な考察です。

AC-CDIはコッククロフト・ウォルトン回路(CW回路)を使って非常に高い電圧を設定出来ます。
このアイディアは某有名な自作CDIのサイトで紹介されてますが、このままSDR用を作っても本当によろしくない事が待ってます。(良い悪いというよりは淡々と事実のみ記述したいと思います)


ではまず倍電圧(CW回路)の問題について。

SDR(恐らく他のデジタルCDIを積んだヤマハ車も)にこの回路を搭載すると、700Vの電圧が発生し、定格オーバーとなる部品が出てきます。

電子部品の定格とは、一瞬でも越えてはいけない値であり、それを超えるといつ壊れても不思議ではなく、またその後定格を下回って運用したとしても、もはや信用できない電子部品となります。
本来ならば、700Vに耐えるにはだいたい1.5倍の定格、つまり1000V位の耐圧がある部品を使うのが電気回路的なセオリーです。
CDI内部の問題だけでなく、他にも以下の回路に重大なダメージを与えます。
・IGコイルの1次側を使うタコメータ。ヤマハのタコはTZR等、だいたいこれです。
・別体のYPVSコントローラ。SDRやTZR(1KT〜2XT)、DTの一部車種、RZRなど。
・IGコイルそのもの。層間短絡の危険性があり、熱による劣化が早まる可能性があります。いや確実に早まります。


これに加えて進角制御をしていない回路の問題です。(寄り道です)

デジタル進角回路がない限り、SDRの点火時期を決めるピックアップコイルの波形は、BTDC70度、7度に発生します。
どちらを使っても、エンジンはまともに動作はしません。
70度で点火すればエンジンは掛かりませんし、掛かったとしてもクランク等に大きなダメージが発生します。
適切に動作するのがBTDC21度ですから、アナログ回路だけで動作させるにしても50度程度の遅延回路が必要になります。

7度ですと、後述しますが本当に全くパワーが出ませんが、エンジンが掛からない訳ではなく、また2ストロークの特性で高回転側は回らないでもないです。ただ、本当に動くだけ、という状態になります。

閑話休題。
CW回路による倍電圧化のメリットとして、
(1)プラグギャップを大きく取ることが出来る
(2)オイルまみれになる2ストのプラグ洗浄能力を上げることが出来る
(3)不安定な混合気の状態で無理やり点火出来る
等が考えられます。

(1)のプラグギャップを広く取る事は、(3)の無理やり点火できる事にも繋がります。
ただ、ギャップを広くしても、一箇所で点火する事には間違いがありません。爆炎がピストンを叩く速度がタイミングが速まり、これが進角制御相当となる事は考えられますが、そこは進角のデジタル制御しますので不要です。

(2)のプラグ洗浄能力についてですが、ノーマルで走っていても数千キロ持つ訳ですから、他のデメリットを差し置いてまで必要なものとも思えません。

(3)に関しては、自分の車体や、これまで島田優選手の動画を見ている限り、少なくともパワーバンドで失火している様子はありませんので不要です。

良く世間で言われている「点火する為の電圧を高くすると、始動性が良くなる、中間加速が良くなる」等の話が出てきますが、始動時の話は本当だろうと思います。始動時は混合気が不安定なので、これによる点火ミスを高い電圧で少しでもカバーしてあげる事は可能かと思います。
中間加速に関しては体感できる様ならまず他になにか不味い事が起きているので、点火電圧をあげる前にキャブ設定を見直すとか、インシュレーターがエアを吸ってないか等を確認した方が良い結果に繋がると思います。
エンジン始動後加速時にミスファイヤが発生しており、それを高電圧で賄うのは単なる対処療法に思えます。
本来混合気の問題があるならば、まずは正常な混合気に戻す必要があります。極端に薄い、濃い等は、点火していたとしてもエンジンにダメージを与えます。

以上です。



さて、本日の検証作業についてツラツラと日記を記載します。

さて、先週全然出力が出なかった原因ですが、いつもの DSO203 デジタルオシロスコープで波形を見てみると、マイコンに入力する側の点火信号が入ってませんでした。




参考:CDI強化作戦→敗退

なんと、820Ωと820KΩを間違えて装着していたというオチ。
ハンダやり直しです。

この基板は厚みがあり穴径が小さいので、やり直しがとっても難しくなっています。

ハンダコテを当ててハンダを溶かして抵抗部品を抜くまでは比較的簡単ですが、スルーホールのハンダを全部除去するのは大変で、なかなか上手く行きません。最後はドリルを使って、穴に埋まったハンダを取り除いてます。

iPhone 006

このCDIはPICマイコンが壊れてもアナログだけで走るのですが、それを初体験できました。
(なんで今までやってなかった・・・)
どうも排気と爆発が同時に行われている様なイメージで、チャンバーからはパシュパシュ音がします。
もうギリギリ走ってるって感じです。
PICマイコンは回転数が0と認識してますから、YPVSも開きっぱなしですから当然ですね。

抵抗を戻し、デジタル制御を有効にして修理完了。



さて本題。

CDIの電圧を高めると本当に効果があるのか。
この疑問を解決する為に、スイッチで切り替え可能な装置を作りました。
iPhone 041

本当に効果があるならめっけもの。
この装置はこんな風に取り付けました。

iPhone 011

雨が降ったら水が浸入しそうですが、まぁ試験なので。

波形をとったところ、600Vを超えてました。
IMAG005


少しアクセルを煽るだけで、700Vに手が届きそうです。
全開走行したら700Vを超えると思います。

IMAG006

この時点でシズキの耐圧630Vコンデンサや、サイリスタ(SCF25C60)の耐圧600Vは定格オーバー。
それぞれの部品がもつ余裕分でもっているだけで、何時壊れてもおかしくありません。


CW回路に使用したキャパシタが1.0uFという事で、想定以上の電圧が出てしまっていますので、CW回路側にもう少し大きめ、例えば2.2uFを使うか、CDI側のキャパシタ容量を増やす必要があります。

そこで、CDIのキャパシタを1.5uFから、2.0uFにして実験です。
1.5uF+0.47uFの構成です。

iPhone 008

この容量なら充電時間もそこそこ掛かる為、電圧が撫でられるはずという思惑です。
どうにかこうにか600Vを切るところまで電圧を下げられました。

波形はこんな感じです。
IMAG008
 

さて、定格問題も解決したので試走です。
スイッチ切り替えでCW回路を試した事はありませんので楽しみにして走りました。

結果、少なくとも体感ではたいして変わりませんでした。
たいして、ということはちょっとは、という事なんですが、低回転は良くて高回転がちょっと?
うーん。どちらも気のせいかも知れません。

4000rpm位から実用的に街中を走行できて、下は6500rpmから、上は9500rpmまでがパワーバンドで、引っ張れば10500rpm程度までは使えそうです。
そんな感じです。
結局、CDIはそもそも電圧が高く、必要かつ十分な電圧が簡単にIGコイルで発生されますから、倍にしてもたいして着火性能に違いは無いのかも知れません。
というか、倍電圧にしなくてもしっかり点火できてますので、変わらないのではないかなと。

当初中間加速が良くなり、気を抜くとフロントが浮いてきそうな感じになったので、CW回路はやはり意味があるのかと思ったのですが、回路をオンオフしてもどちらも同じく変わらないように思えます。
どうやら2.0uFに増量したメインキャパシタがいい感じの様にも思えます。

ただし、この手の実験は実際に走行しながらスイッチを切り替える様で無いと、本当の効果は分かりません。
中間加速が良くなったような気がするのも、今日は気温が低く燃調が上手くあっただけなのかもしれません。
こちらもスイッチでCDIキャパシタ容量を切り替えられるものを作って検証しないといけません。
という事で、こちらは別途調査してみたいと思います。



個人的な感想ですが、電圧を必要以上に高めても体感できる程の項かは無かったです。
コンデンサ容量を増やす為に効率よく発電された電力を使う方に心を砕いた方がまだマシの様な気がしました。
始動性等に問題がない限り、信頼性のある電圧で抑えておく方がより好ましい結果に繋がると思います。