著作権と特許権(と意匠権)をゴッチャにしている人、最近めっちゃ多く見かけます。
もし著作権を主張するのであれば著作権法をまず読んで見ると良いかと思います。
この法律結構面白いんです。


まず真っ先に定義されいてる著作権について、同法では以下の通り定義されています。

「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」
この創作的というところがキモで大前提。
権利を主張する対象が上記定義に当てはまるものかどうかは予め確かめる必要があります。

著作権によって「アイディア」は保護されません。
保護されるのは「創作的な表現」です。

例えば電子部品を組み合わせて作った回路図に著作権を適応される事はまずありません。
回路図の中に、表現として独創的で、文学的、芸術的、美術的な表現が入ってるなんて事は、まずもって無いからです。
逆にそんなものが入った回路図なんて読み辛いですよね。

単純な回路図、例えば以下の様なもの。
v22

これに著作権が認められる可能性は限りなく0です。
これはある目的を達成する為の手段の羅列、単なる部品の羅列です。
仮に幾つかのアイディアがあったとしても、それは「著作権法が保護する対象」ではありませんから、著作権を主張することは出来ません。
アイディアを保護するのは別の法律があります。

もしこれに著作権が認められ、同様のものを作る事がなんらかの制限を受けると、これは全くよろしくありません。
誤解を恐れずに言えば、法とはそもそも世の中の健全な発展を促す為のものですから、著作権法として守った方が良いならば守るし、守らない方がよければ守りません。

こんな単純な回路図守っているようですと、世の中の発展が全く阻害されてしまいます。
川端康成の雪国に著作権が適応されないならば、アホ臭くて誰も文化的創作的な文章を書かなくなり、世の中の発展が全く阻害されてしまいます。

ちなみに某オリンピックのロゴで、盗作疑惑が沸いた事は記憶に新しいのですが、これって著作権侵害って殆ど成り立ってなかったであろうと予測されてました。
単純な曲線と直線の組み合わせで構成されたデザインだったので、著作権ではなく商標権だったというのが大方の見方です。商標権は登録制なので、今回事前に商標権を設定していなかった某ベルギーのおっちゃんはあのまま続けていても著作権で訴えたところで単なるクレームで終わったと見られてました。
著作権侵害ではないだろうとの記事はググれば多数出てきます。
(このあたりこのあたりが分かりやすい記事だと思います)
逆にこの件が著作権侵害であると指摘している専門家の見解は、私は見つけられませんでした。
特許権などの審査が入る権利と違い、著作権は自然に発生するものですから、著作権法はその保護対象が極めて限定的なのです。


過去在籍した企業で、とあることから裁判で争った事がある経験ありますが、例えばソースコードをある程度丸っとパクられたのですが、著作権侵害とは認められませんでした。(つまり負けたのです)
一部のソースコードをコピペしたとしても、最終的な結果に相違があるのですから、今考えれば負けて当然だったと思います。

前述の回路図を見て、実際に動くものを作って、例えばヤフオクにて販売したところで「著作権」によってその販売を差し止めるなんて事はほぼ不可能なのです。
 
例えばRFCで規定されたプロトコル(仕様や設計図)を元にWebサーバやメールサーバを実装しても、それって全く違うものなので、著作権はなんら関わることが出来ない領域なんですね。

Wikipediaの引用で申し訳ないですが、  
「既存の著作物Aと同一の著作物Bが作成された場合であっても、著作物Bが既存の著作物Aに依拠することなく独立して創作されたものであれば、両著作物の創作や公表の先後にかかわらず、著作物Aの著作権の効力は著作物Bの利用行為に及ばない。」

ま、実際Linuxなんてものは、UNIXという仕様を元に、新たに実装をすることによって著作権を回避しているわけでして、この辺はもう非常に基本中の基本的な話です。
ここが制限されてしまいますと、今世の中で動いている多くのネットサーバは無くなってしまいます。
携帯電話も実はほぼ全て死んでしまいます。AndroidはLinuxベース、iPhoneはBSDベースですからね。
(でも決着はとうの昔についていて、その様な心配は全くありません)

どこに創作性があるのか。もし仕組みそのものに関心を向けるのであれば、特許権を行使する為に特許法に基づく申請が必要です。
 
特許庁の審査に通るものかどうか、調べていけば、先人の知恵の組み合わせで作成した設計図や図面によって特許を取るのがどれだけ難しいか分かります。
しかし一度取れれば特許権は比較的強力です。

なので本来のアイディア(新規性や進歩性)の権利を主張するのであれば、しっかりと特許申請をすべきです。
納得の行かないと思う人は、そういうことがしっかりと守られる国に行くしかない訳ですが、著作権、特許権の概念ってほぼほぼ全世界共通になってきていますので、恐らく人類共通の感覚はそっちなんだと思います。
(お隣の自由な国は知らんですけど)

創作性の無いアイディアをコピーされて困るならば、公開しないか、特許を取る、商標を取る等の法による保護を得る必要があります。



この間幕張オフに行ったとき、絶対言われると思った事がやっぱり言われました。
「あの電子デバイス、うちのショップで売ってもらいたい位だよ」

んで、もう太古の昔から用意していた答えを返しておきました。
「手間賃50万くれたら一個作る(つまり人に言われてやる気はありません)」
「オークションで誰かが作った完成品を売れば良いんじゃないかな」
「市場が求めているなら提供する側も現れるんじゃないかな」 

私は「コピーされる頃にはもっとより良いものを作って行く」のが健全だと思います。
少々人と感覚が違うかも知れませんが、もしなんらかのアイディアが市場を作っていく可能性があるのであれば、そこで商売をする気が無ければ、自由にして貰った方が世の中の為だと思います。
ワイがワイがと過去のものに対して自己顕示をするなんてしたくはありません。
次の関心事がつきませんので色々やって既に動いてしまったものに然程の興味は無いです。