ギターは6本の線が付いていますが、例えば1弦をEの音に合わせず、ギリギリ締め上げていっても、6本全部を使って引くと不協和音しかなりません。
正しく6本の弦をチューニングする事によって、綺麗な和音が鳴り、複雑なコードを表現できる様になります。
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ヤマハ2ストローク用のデジタルCDIであるOSR-CDIはRZやTZR(やDTやSDRや色々)の点火時期を調整出来る様になります。
しかし、もう何年も前から気になっている事があります。
それは「点火時期を早めると出力があがる」と思っている人が多い事です。
本当は「点火時期は最適な場所に設定すると出力があがる」と思っています。
ギターのチューニングと同じ。
純正CDIよりも点火時期を早めると出力が上がる、という仮説は間違いと断言できます。
出力があがる事もあるし、下がるところもある、が正解です。

なぜ点火時期を調整するのか?

純正CDIでも回転数やスロットルポジション等によって点火時期を変化させています。
如何にNSRとTZRの点火時期を上げておきます。
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アクセルを開けているときの方が点火時期は遅かったりもします。
なんでこんな事をしているんでしょう。
ちょっと色々インターネッツで勉強した結果を書いて行きます。

(1) 理論上もっとも効率が良いと言われているATDC10度で最大圧力が掛かる様にする為
最大圧力は、燃料に点火後、暫くの時間後に発生します。空気とガソリンの混合気をシリンダーとピストンで圧縮し、プラグで火花を飛ばすと、この混合気が燃焼を開始し、凄い勢いで膨張し始めます。燃焼が進むにつれシリンダー内部の圧力は上昇を始め、これがピストンを押してクランクに伝わり、エンジンの出力になります。
この「暫くの時間」は様々な要因によって変化します。
・燃調が濃いと概ね短くなる、薄いと概ね長くなる
・掃気ポートの形状によって燃焼時間が大きく変わる
・その他色々な理由で燃焼時間が変化する
・「暫くの時間」は、概ね短い方がエンジン出力を上げやすい(後述)

(2)2ストロークは点火時期によってシリンダー内の充填効率が変化する為
・充填効率はエンジン出力に大きな影響を与える
・2ストロークは充填効率をチャンバーの反射波に頼っている
→点火時期を遅らせると、反射波が速くなる(高回転向き)
→点火時期を早めると、概ね反射波が遅くなる(低回転向き)
例えば高回転側エンジン(の高回転領域)は点火時期はより遅くなる

なぜ燃焼時間が短い方が良いのか

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この図は上から
・電気信号の発生の様子(例としてRZ250想定)
・シリンダーとピストンの様子・シリンダー内の圧力の模式図

ガソリンの燃焼速度自体はエンジン回転数を上げても変わらないが、シリンダー内の混合気の流速がエンジン回転数に比例して速くなるので、点火時期(角度)とエンジン回転数に相関がありません。例えば2000rpmと4000rpmを比較すると、点火から燃焼を開始してシリンダー内が最大圧力となるまでの「時間」は半分になるので、「点火時期(角度)」は一定で良い。
・・・という学術的な見解らしいですが、実際4ストの場合回転数が3000rpmだろうが12000rpmだろうが点火時期殆ど一定ですから、基本はあっているんでしょうね。

この図で書いているのは、点火時期は最終的に遅ければ遅い程、基本的には良いエンジンと言え、出力が取り出しやすいんじゃないかなって事です。
見ればわかる通りピストン上昇中にシリンダー内の圧力上昇は、出力が悪くなる要因です。理想を言えばATDC10度の時に点火して瞬間に全部燃焼すれば良い訳です。物理的に不可能ですけれども。
燃焼時間が長くなってしまう理由は、
・掃気ポート、排気ポートに課題がある
・燃調に問題ある
・一次圧縮に問題があるなどなど、色々と要因はあるんじゃないかなと思いますが、実際古い車両程点火時期が早く、新しめ(といっても90年代)のエンジンは点火時期は遅いです。
84年製のRZVは最大BTDC30度を超える点火時期なのですが、90年代のデジタルCDI化された3MAの頃には最大BTDC25度位にまでなっています。そういえば、70年代初頭のHS-1エンジンでキャブ設定がまだの車両だとなんとBTDC50度位が一番調子良かったんです。どれだけ燃焼に時間掛かってるんだと。

自分は「点火時期を普通より早めている」という人のエンジンは、「どこか燃焼が上手く行っていない」と言っているのと同義なんだと思って聞いていたりします。口には出しませんけど。

デトネーション対策としての点火時期

よく分かりませんが、ハイオク入れてデトネーションを遅らせて点火時期を進めると出力が上がる、といった話を良く聞きますけれども、それは圧縮率をガンガン上げているか、過給器で加圧している場合なんだろうと思います。

普通の圧縮比しかないエンジンでは、通常3000rpmも回っていれば、理想空燃比の場合デトネーションは発生しない(出来ない)そうです。
自分は実際に動いている最中のエンジン中身見た事ないからしらんですが、デトネーションが発生する前に燃焼が終わるそうです。ゆっくり燃えて圧力がジワジワと高まると発火、という流れみたいですね。電子制御でデトネが発生すると点火時期を遅らすのは、ピストン上昇時の圧力を下げる為で、その結果圧縮による温度上昇が抑えられ自己着火を避けるという理屈とのことです。つまり、ポート形状が良く、燃調が出ていれば、点火時期を遅らせる事が出来て、ピストン上昇時の無駄な圧力上昇を抑えられ、無駄な温度上昇も抑えられ、デトネーションも発生し辛くなるという事かなと。ついでに宝くじも当たって彼女も出来てウハウハですになれば良いのになぁ・・・とか。

最後に

今回書いている事って、真面目に書くと大変長くなってしまいそうです。
なので極力無駄を省いて書いていますけど、結局言いたい事はただひとつだけ。
点火時期の調整って早める為にするんじゃなくて、その他のチャンバーやキャブレーションに対して調和する為にするんだってこと。

「点火時期早い」じゃなくて「点火時期ピッタリ」なんだろうって思います。