まだまだβ版なOSR-CDI v2.0.0c。
とはいっても、例えばOSR-CDI v1.2.0なんかよりは信頼性あると思います。
これらは開発に協力して貰えている人達のお陰です。

今回の変更点は、ファームウェアやPCソフト、基板に変更があった訳では無く、部品の選定だけです。

始動性が改善している話

OSR-CDI v2はサイリスタの代わりにFETを使って放電制御しているんですが、どう考えても始動性が良くなっています。
なんとこの真冬でも、チョーク引かずにキックして一旦始動してしまいます。
その後チョークを引かないままだと、やっぱり止まるんですけど、以前のサイリスタ版だと考えられない事です。

そしてまた、以前このCDIでガス欠を起こした時の事なんですが、自分は完全にCDIが壊れた、と思った位急にストンと止まったんですね。
ガス欠なんてガソリンタンク9LしかないSDRに乗っていると、割とやってしまうんですが、こんな止まり方は初めての体験でした。
ガス欠の時って「ゲフン、ゲフン」とか失火が多くなって止まるイメージなんですが、本当にストンと止まりました。
最初はその違いに気が付かなかったんですが、田宮氏がCDIの変化点ではないかと。
そういわれれば、そうなのかも知れないのですが、その時はまだちょっと確信が持てませんでした。
しかしその後、田宮氏のSDRも同じ様に始動性が改善して、低回転で粘る様になったと言います。
自分のSDRも相変わらず真冬にも関わらず、2週間ぶりにキックペダルを降ろしても、簡単にエンジンが掛かる様になりました。

ガス欠時や始動時のA/F比が酷い時でも、着火する可能性が高まっている、と考えるのが妥当でしょう。
こ完全な燃調が出ている車両で、トルクバンドで走っている様な状態では、きちんと毎回着火しているので、恩恵はない話ですが、始動時やパーシャル走行でA/F比がズレているときにはメリットになると思います。

電圧が低い時の話

その後、パチロクさんのRZ、田宮さんのSDR、共に電気食いのバッテリーヘタリ車両で、電圧が10Vを切る頃にエンジンが止まるって話が出てきました。
電圧10Vを切る様な車両をフォローすべきなのかどうなのか、とは思いましたが、純正で動いていたのであれば動かしたい、というポリシーの元、低電圧でも動作する様に色々と検討しました。
最初に使っていたFETをドライブするTLP250Hは、10Vを切ると動作を止めてしまう機能が入っている事が分かりました。これは東芝の良心的な回路ですが、今回の場合は邪魔になります。
ちょっと古い同等品であるTLP351はこの良心的な回路が入っていません。
また、パワーMOSFET、東芝TK20A60Uはゲート電圧の閾値がやや高かったので、ルネサスの2SK3234を選定しました。TK20A60Uはややオーバースペックだったと思います。

このパーツを炎のテスター田宮氏が暫く試してみたところ、
・FETドライバーはTLP250Hの方がTLP351より低電圧時エンジンが粘る(止まり辛い)
・パワーMOSFETはTK20A60Uと2SK3234の違いは無い
という事でした。

ドライバの違いによる粘り

FETの違いが出なかった事は幸いですが、ドライバーによって違いが出ているのが気になります。
ただ、どちらにせよ始動性はOSR-CDIv1よりは良い、という事で、部品選定としては一旦TLP351を使う様にします。

なんでFETドライバーであるTLP250HとTLP351で違いがでるんでしょうかね、とずっと思っていましたが、最近はFETのドライブ能力に違いがあるからかな、とか思ってきました。
つまり、パワーMOSFETのゲートをさっさと開いているので、IGコイルにかける電圧の立ち上がりが良いから、という仮説です。

FET版にして始動性が良くなった時に、以前色々と調べてたことがあります。

この時結論付けたのは、サイリスタとFETではなんも変わらない、という事だったのですが、今一度見直してみると、ちょっと違った様です。

以下はFET版です。
青がイグニッションコイルの2次側の電流、黄がメインキャパシタの電圧です。
IMG_4060

以下はサイリスタ版です。
IMG_4061

イグニッションコイルに流れる電流値の違いはやっぱり見つけられないのですが、よく見るとコンデンサの電圧曲線に僅かながら違いがありそうです。
良く見ると下側サイリスタ版の方は電圧の立ち上がり(マイナス電圧なので立下りですが)がなまっている様に見えます。
一方上側は鋭角です。

手持ちのデジタルオシロがこの解像度までなので、少しわかり辛いですけれども、これまでの田宮氏の実証、自分の実体感からして、この辺が正解なのでしょう。
コイルの起電力はLx(di/dt)なので、コンデンサが流す電流のキレが良ければ良い程発生する電圧が上がる事を考えれば、辻褄が合うのかなと。

少し話を戻すと、FETドライバーであるTLP351とTLP250HだとTLP250Hの方がエンジンが低回転時に粘る、という話でした。
エンジンが粘るというのは、A/F比が悪い時でも失火せず着火するという事が原因と思われます。
それはFETのキレが良いので、イグニッションコイルの2次側に高い電圧が発生していて、種火が大きいから、もしくはA/F比が非常に悪い状態でもきちんとプラグ電極からアース方面に放電しているから、のどちらか。これはどちらにせよ、電圧が高いとそうなると思います。

TLP351とTLP250Hが供給するパワーMOSFETのゲート電圧には、その波形に違いがあり、TLP250Hの方が鋭角に立ち上がる、と想定できます。
データシートを見ると、TLP351もTLP250Hもどちらも立ち上がり時間Tr、立下り時間Tfも同じく50nsなのですが、、、よく見ると測定条件が違います。
TLP250H→20 Ωに接続された10nFのコンデンサを充電する時間
TLP351→47Ωに接続された3nFのコンデンサを充電する時間
なんとも微妙な条件の違いがありますが、どちらにせよTLP250Hはより大きな(静電容量を持つ)FETをドライブする為に作られたものの様です。
前述の抵抗値が同じとしても、よりTLP250Hの方がパワーMOSFETの静電容量を満たすことが出来るでしょう。

ちなみにTLP250HじゃなくてTLP250自体はどうなんだ、というと、パワーMOSFET接続を想定した検証値がサービスマニュアルに載っていませんでした。
ただまぁ、内部がFETじゃなくてトランジスタなので、そんなにスイッチング速度が良いとは思えません。実際、別回路での伝搬速度の記載があるんですが、桁違いな時間でした。

しかし細かな部品の品番が違うだけでも、オートバイで体感できる位に変わってくるのが面白いですね。

まとめ

TLP351は10V程度の低電圧でもちゃんと動作する
TLP250Hは10V切ると始動できなくなるが、より良い点火が得られる。
よってレーサー等はTLP250Hが良く、普段乗りする、電源に不安がある、等の場合はTLP351がより良い結果を得られる。

OSR-CDIv2.0.0cにて、標準は一旦TLP351にします。